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院長

年末ジャンボ宝くじ


(お断り)この話はフィクションです


 みなさんは宝くじ、買いますか?

僕は昔からジャンボ宝くじだけは毎回なんとなく買っていました。

でも当選金が投資額を上回ったことは1度もありませんでした。

周囲でもそんな話は聞いたことがないし、

「宝くじの高額当選者なんて本当はいないんじゃないの?」

ちょっと前まではそう思っていました。

ところが、です。年末ジャンボの1等前後賞合わせて3億円が当たってしまったのです。

ずっと内緒にしてきたのですが、当選金をすべて使い果たしたのでここに事の顛末を

告白しちゃいましょう。

 2年前の師走のある日、昼休みに用事で小田急町田駅周辺を歩いていた時のことです。

南口のそばにある宝くじ売り場の前を通りかかった時、

「ああ~っ」という声がしたので見ると、

そこでくじを購入していた女性が財布から小銭をばら撒いてしまったところでした。

周りの人たちはまるで知らん顔で、中にはお金をまたいで通り過ぎる人までいます。

「全く信じられない。あいつら何考えてるんだ?」

と、四方に散らばったお金を拾うのを手伝ってあげたのです。

 拾い終わってふと顔を上げると、宝くじ売り場のおばちゃんの

「あんたも買っていったらどうなのよ」っていう目と合ってしまいました。

仕方なく「案外大当たりしたりして」なんて思いながら連番で10枚、

3000円分だけ購入したのです。でもその時は用事があったし目的地に急いでいたので

革ジャンの内ポケットにつかんだまますっかりその存在を忘れてしまいました。

 それから10か月以上が過ぎ、たまたま車の中で聞いていたラジオで換金されていない高額当選番号が何百もある、という話からその10枚のことを思い出しました。

ふとジャンパーのポケットに手をやるとまさにそのままあの時の宝くじが入っていたのです。早速インターネットで調べたら見事3億円が当たっていた、という次第。

あの時お金を拾うのを手伝っていなければ、売り簿のおばちゃんと目が合わなければ、

ラジオを聞いていなければ、当選はありませんでした。

「情けは人のためならず」っていうけどまさにその通りになりました。

皆さんも困っている人を見たら優しく手を差し伸べてあげてください。

知らん顔はダメですよ。

 初めは驚くより「本当に当たるんだ」と妙に醒めた思いでくじを眺めていました。

そのあと銀行に行き、諸手続きを済ませて自分の通帳に3の後ろにゼロが8個も並んだ数字が印字されているのを見て、じわじわと実感が込み上げてきたのです。

 それと同時に絶対に他の人には知られたらマズいと思いました。

宝くじの高額当選者のその後の人生が狂う話はしばしば聞くし、

当選金目当てのおかしな犯罪に巻き込まれたくはなかったからです。

 宝くじの当選金なんてあぶく銭以外の何物でもないからパ~ッと使い切るのが良いと考えました。で、まず住宅ローンを全額返済しました。

これだけですごく身が軽くなり、最高に幸せでしたねえ。

 かのビルゲイツは母校のハーバード大学に、「脳トレ」で有名になった川島教授も

母校に研究施設をプレゼントしたそうです。

そういう姿に以前から憧れていたのでこの機会にと思い、安い授業料で僕を医者まで育ててくれた母校に1億円を寄付しました。

 残りのお金はいくつかの慈善団体に匿名で2~3000万ずつ寄付して、はいおしまい。残高はあっという間にゼロになりました。3億円なんて、余計なことを考えなければ使うのはとっても簡単でした。贅沢なことに使おうとするからややこしくなるのです。

正直なことを言うと1度行ってみたかった都内の高級鮨屋に家内と出かけたことはありますが、まあそれくらいです。

 高級な服やアクセサリーとか高級外車、別荘など当選金の使い道はいろいろあると思うけど、物欲は結局のところ終わりというものがありません。

いくらでも欲しくなっちゃう。そんなものを買いまくって3億円使い切ったところで達成感や充足感は得られないと思います。「もっと欲しいのにぃ、お金が足りない」となるハズです。

 最近になって僕の当選金の使い道を知った知り合いなどは「なんて勿体ないことを」と口々に言うけど、そんなことは大きなお世話というものです。たまたま買った宝くじでたまたま手にしたお金に自分の魂を売り渡したくはないですからね。僕は大満足しています。

 今後もう2度と宝くじを買うことはないだろうけど、今回の当選で「本当に当たる」ことも身をもって知ることができたし、それで僕の人生がブレたり狂ったりしなかったことは1番の収穫です。当選を他人に(しばらくの間は家内にも)内緒にし続けられたのが正解でした。めでたしめでたし、というところかな。

 ここのところ日本全体を沈滞ムードが覆いつくし、良い話はあまり聞こえないだけにせめてこれくらい景気のいい初夢を見てみたかったな。


え、初夢?

本当に当選したんじゃないの??


まさか当たる訳ないですね。信じちゃダメですよ、全てウソなんだから。

一説によると高額当選って東京ドームの満員の観客の中からただ一人選ばれるくらいの確率だそうです。ホームランボールやファールボールが自分の懐に飛び込んでくる感じかな。それを聞いてからくじを買うのさえバカバカしくなりましたよ僕は。ちゃんちゃん。


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院長コメント


このデタラメを書いたのは2011年冬号です。僕が本当に当選した、と早とちりした患者さまから瞬く間にウワサが町田市内はもとより近隣他県まで広がりました。

本当に驚いたのある患者Aさんから聞いた話。登山が趣味のAさんが関東のとある山を登った時です。山頂で休んでいると他の知らない2人連れの登山者の話が聞こえてきたそうです。聞くとはなしに聞いていると「町田市にこなり眼科というクリニックがあって、そこの院長が3億円当たったんだって!」と。その2人はいったいどこの誰だったんだろう?

その後も何度も患者様以外の人からも「当たったんだって?」と聞かれ、当初は火消しに躍起になったこともありました。でもだんだん面倒くさくなり、しまいにはどうでもよくなったものです。ウワサって恐ろしいですね。あれから10年以上経ったのについ最近もスタッフが患者さまに尋ねられていました。


繰り返して書きますが、

僕は宝くじで高額当選したことは1度もありません(キッパリ!)。

くれぐれも誤解なきよう。



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